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vol.82 [ 2012.11.15 ]
税理士資格と公認会計士・弁護士
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.82 ━2012.11.15━
▼ 税理士資格と公認会計士・弁護士
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■ 税理士資格とは何か

税理士は租税に関する税務代理、税務書類の作成、税務相談を行うことを生業
とし、税理士法により規定された専門家です(税理士法第2条参照)。
戦後の税務代理士制度が前身となっています。
税理士法によれば、税理士になる資格を有する者は以下のように定められて
(税理士法第3条)おり、公認会計士や弁護士が含まれています。
(1) 税理士試験に合格したもの
(2) 第6条に定める試験科目の全部について、第7条または第8条の規定により
  税理士試験を免除された者
(3) 弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む)
(4) 公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む)



■ 「税理士の資格取得制度のあり方」の公表

公益財団法人日本税務研究センター 資格取得制度研究会は、「税理士の資格
取得制度のあり方(意見書) ~税理士法第3条第1項第3号及び第4号について
~」という文書を平成24年9月19日に公表しました。
資格制度研究会は4名の研究者によって構成されており、以下の目的があると
しています。
「平成24年5月25日付けで日本税理士会連合会から委託のあった「税理士
の資格取得制度のあり方~税理士法第3条第1項第3号及び第4号~」に関す
る研究について、有識者を中心とした資格取得制度研究会(会長:金子宏東京
大学名誉教授)を設け、その研究成果を取りまとめたものである。」
さらに、「本意見書は、特に、現行税理士法が定める「税理士となる資格」を
有する者のうち、弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む)及び公認会計
士(公認会計士となる資格を有する者を含む)が自動的に資格を付与される
ことについて、立法の経緯、税理士の使命や業務との関係、規制緩和、国際的
趨勢、そして弁護士及び公認会計士と税理士資格のあり方などの論点を中心に
検討したものであり、日本税理士会連合会における今後の税理士法改正の研究
・検討に資することを目的としている。」としています。

さて、その内容は、次のように整理できます。
税理士の能力と税理士試験の位置づけを述べたうえで、規制緩和の観点で合格
者数を大幅に増やした弁護士及び公認会計士が、結果的に「ひずみを生じさせ
た」ことを明らかにし、そのため、税理士となるべきものは限定すべきである
と主張しています。
それに続いて、弁護士及び公認会計士と税理士資格との関係を論じています
が、その中では、特に資格試験の観点での整理がなされており、司法試験には
会計科目が設置されていないこと、公認会計士試験には公法の科目が設置され
ていないことを指摘しています。
特に公認会計士については、「現在の公認会計士試験は、隠れた税理士資格
取得試験となっている」などとして、税理士資格を付与することに対して強く
否定的な立場をとっています。

そして、最後に「税理士法第3条第1項第3号及び第4号のあり方」として、
「本来、税理士試験、司法試験、公認会計士試験は、その目的も、方針も、
したがって試験問題の内容も、出題の傾向も、異なっていて然るべきである
から、それらの試験を受験する者が、それぞれ別異のものとして受験しなけ
ればならない制度として定立しておかなければならない。
一方の資格を有する者が、他方の資格をその試験科目の全部又は一部を受験す
ることもなしに取得する制度は、本則として(原則として)、許容さるべきも
のではない。仮に、例外の許容を考えるとしても、それは原則に照らして狭義
で厳格でなければならない。」としており、基本的には税理士資格を付与する
ためには税理士試験の全てに合格しなければならないという趣旨の結論を導い
ているのです。



■ 「「税理士の資格取得制度のあり方」に対する疑問」の公表

一方で、平成24年11月6日に、会計大学院協会は「「税理士の資格取得制度の
あり方(意見書)~税理士法第3条第1項第3号及び第4号について~」に
対する疑問」という文書を公表しました。

会計大学院協会は、「会計大学院相互の協力を促進して会計大学院における
教育水準の向上を図り、もって優れた職業会計人を要請し、社会に貢献する
ことを目的として、会計大学院を設置する法人により構成される団体」であ
り、「日夜、公認会計士及び税理士の育成に向けて教育を行ってきていること
からも、わが国における会計専門職業資格として大きな位置を占める公認会計
士資格と税理士資格のあり方については、常日頃から多大なる関心を有してい
る」としたうえで、理事長である高田敏文氏を中心に作成された文書である
としています。

ここでは前の報告を受けて、次の点について「意見書における重要な誤解と
疑義」をまず整理しています。
(1) 公認会計士試験及び資格取得に対する誤解
(2) 税理士資格の位置づけに対する誤解
(3) 税理士業務の水準に係る議論の無視

それぞれを簡単に整理します。
(1)については「意見書では、税理士試験については、科目合格であっても
税法に対する「学識とその応用能力を有している」(7頁)とするのに対し
て、公認会計士試験については、「その試験内容は税理士業務を行うために
必要とする十分な水準に達しておらず、税理士試験の所得税法と法人税法と
は異質性がみられる」(8頁)として、税理士試験の優位性を論じようとして
いる。」としたうえで、ここには事実認識の誤りがあると指摘している。
つまり、「公認会計士となった者は、実務補習による税務実務科目の履修と
その修了試験によって税務に対する知識と経験を得ていることが想定され、
さらには、その間に就く実務従事の内容によってはさらに税務に対する経験を
深めている場合もあるであろう。したがって、上記の批判は、公認会計士の
試験及び資格制度に対する十分な理解を得ていないか、あるいは、意図的に
都合のよい点のみをもって批判しているとしか考えられないのである。
意見書では、他の箇所(たとえば、20頁及び21頁脚注)においても、同様に
公認会計士試験の租税法のみに言及して一方的な主張が展開されている箇所
が散見される。
なお、「公認会計士は法学(特に、公法)の知識を有してはいない」(18頁)
や、「基本的に法律学のトレーニングを受けていない公認会計士」(19頁)等
の批判については、公認会計士試験において租税法の試験があること、及び
上記と同様に、実務補習と修了試験の存在によっても、根拠のない批判で
ある。」としています。

(2)については、まず税理士資格が存在する国はきわめて少数にとどまる点で
ミスリーディングを招く主張がミスリーディングであるとし、「税理士資格
を擁する国もあるのであって、そうした国々においても、公認会計士は、税務
を行うことが認められているのである。たとえば、韓国では、公認会計士試験
の合格のみで、税理士業務を行うことが認められている。」としています。
また、「「税理士業務には会計業務が必然的・不可避的に随伴しているので
あるから、論理必然的に、税理士にもあらゆる企業についての監査業務が認め
られるべきであるということにならなければならない」(同頁)と述べて
います。こうした主張に対しては、およそ会計職能と監査職能の何たるかさえ
も理解していないことに、愕然とするのである」として痛烈に批判していま
す。
さらに「監査業務に必要なリスク評価、リスク対応、意見表明、品質管理等々
の内容は一切含まれていない」として、理路展開の矛盾をついた反論を展開
しています。

(3)については「公認会計士試験に合格して、その後公認会計士から税理士
登録を行う者について、税理士業務の水準に満たないとの主張」に対して規制
を強化するのではなく、規制緩和を推進すべき観点から「公認会計士から
税理士への途を閉ざすのではなく、現在行われている実務補習や修了試験の
内容の水準を問うべきであろう」という反論を行っています。また資格試験
における科目合格の制度についても、税理士試験が一度合格した科目は永久
に有効であるのに対して、公認会計士は2年間に限られることを指摘し、20年
前の知識でも有効なのかという疑問を呈しています。

税理士法第3条の改正を求めることの必要性について疑問を呈したうえで、
公認会計士には「実際にはそれどころか、通常の税理士には提供できない知見
やさまざまな領域からの参入者を歓迎する声が少なからず存在しているのでは
なかろうか」とすると共に、意見書における主張を行った研究者に対して、
「仮に公認会計士からの参入者に問題があるとするならば、その実態を調査
し、事実を解明してから見解を述べるのが学者としてとるべき科学的手法で
あると言えるのであり、そうした十分な検証さえも行わずに、単に、資格又は
業界団体間の業際紛争に関わる議論について、火に油を注ぐことは、学者本来
の使命ではない。」との批判を展開しています。

そして、結論としては「両業界の業界団体である日本税理士会と日本公認
会計士協会に対しては、本来検討すべき将来の課題について胸襟を開いて議論
をする環境を整えることで、わが国経済社会における会計プロフェッションの
信頼性強化に向けた取り組みを早急に始めることを強く求めたい。」として、
自らの業界にとらわれることなく、大所高所からの議論を求めています。



■ まとめ

税理士資格のありように関する議論は古い議論です。
特に、公認会計士と税務業務とのかかわりは、通知公認会計士制度の導入、
許可公認会計士制度の導入と廃止という経緯があり、認められる範囲が狭く
なってきたという歴史があります。
一方で地方公共団体に対する監査や、政治資金監査などの最近制度化された
監査業務については、監査業務の一つであるにもかかわらず、税理士がそれを
担う資格者として認められています。
そうであるならば、税務と監査の業際といった小さな議論をするのではなく、
弁護士も含めて職業的専門家として相互に尊重し合いながら、両業界の発展を
指向すべきではないかと考えます。
様々な立場からの多様な意見がありますが、みなさんはどのようにお考えに
なるでしょうか。


参考:
「税理士の資格取得制度のあり方(意見書)~税理士法第3条第1項第3号
及び第4号について~」
http://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/pdf/jtrishikakuiken120919.pdf

「「税理士の資格取得制度のあり方(意見書)~税理士法第3条第1項第3号
及び第4号について~」に対する疑問」
http://jagspa.jp/pdf/20121106.pdf

会計大学院設立趣旨
http://jagspa.jp/bylaws.htm